昔、通学路の空き地の向こうに

とてもすてきなお家があって、いつも眺めてはあこがれていた。

見えるのは、オレンジがかった明かりの書斎と、薪が積み上げられた勝手口。

ひとのお家だから、じろじろ見るわけにはいかない。

通りがけの、一瞬だけ。

書斎の明るさがすごくすきだった。

重厚な棚と、少しだけ見える蔵書。

本を読んで過ごすための時間が、きちんと、適切な環境で準備されている。

一戸建てが欲しい、と思っているのは、このお家を見ていたからかもしれない。

 

久しぶりに思い出してみたけれど、

今は空き地だったところに家が建って、もうあの窓は見えない。